K-POPファンなら誰でも疑問に思うガオンチャートとハントチャートの違い。今回は2つのチャートの違いについて説明しようと思う。
ガオンチャート
- 가온차트 Gaon Chart
韓国文化体育観光部傘下の韓国音楽コンテンツ産業協会が運営する公認総合音楽チャートで各音楽配信サイト、CD制作会社などの販売データを元に集計したランキングを毎週木曜日に発表する。2010年からサービスを無料で提供している。
ガオンチャート
ハントチャート
한터차트, Hanteo Chart
はCD小売店用POSを開発した株式会社ハント情報システムがPOSデータを元に小売店のCD売上を集計したCD売上ランキングをリアルタイムで発表している。1994年からサービスを提供しているが現在有料化されている。
ハントチャート
ガオンチャートとハントチャートのランキング算出方法
ガオンチャートはCD制作会社が出荷した枚数から返品された数を引いてランキングを算出するのに対し、ハントチャートはハントチャート加盟の小売店の実販売枚数でランキングを算出する。
なぜガオンチャートとハントチャートに大きな差が出るのか?
ガオンチャートには海外の出荷分が含まれる。
TWICEの”SIGNAL”を日本のタワーレコードで買う場合、CDの流通経路はおおまかに下記のようになる。
1. GENIE MUSIC(CD制作会社)
↓ A
2. 卸売業者
↓
3. タワーレコード
↓ B
4. 消費者
ガオンチャートはCD制作会社の出荷数(Aの部分)を集計するため、タワーレコードのような海外の売上も反映されるが、タワーレコードはハントチャート加盟店ではない(ハント情報システム社のPOSを使用していない)のでハントチャートには反映されない。
ついでに日本のハントチャート反映店の流通経路はこんな感じ。
1. GENIE MUSIC(CD制作会社)
↓ A
2. 卸売業者
↓
3. 韓国内のハントチャート加盟店
↓ B
4. 日本のハントチャート反映店
↓
5. 消費者
ハントチャートはハントチャート加盟店(Bの部分)を集計するため、ハントチャート反映店で購入すればハントチャートに反映される。ただし1つ業者が増えた分価格は高くなる。
“ハントチャート、ガオンチャート反映店”と併記している店舗もあるが、見ての通りハントチャート反映店で購入すれば100%ガオンチャートにも反映される。
百貨店・大型ショッピングセンターはハントチャート非加盟
現代・新世界などの百貨店、ホームプラス、Eマートなどの大型ショッピングセンターはハントチャート非加盟店。
ミュージックバンクなどの音楽番組ランキングで応援しているアイドルの順位を上げたい”熱心なファン”以外の、いわゆる”ライトなファン”はわざわざハントチャート加盟店で予約せず、普段買い物に行くEマートやホームプラスなどの大型スーパー(ハントチャート非加盟店)に買い物に行ったついでにCDを買う。
このライトファンの売上枚数はガオンチャートには反映されるがハントチャートには反映されない。
ガオンチャートには小売店の在庫が含まれる
ガオンチャートは出荷数-返品数を集計するため、小売品の展示用や返品予定だが返品処理が終わっていないCDも売上として集計される。実際に発表された売上枚数が後から数百~数千枚程度下方修正されたことがある。
ガオンチャートとハントチャートの売上枚数の差が意味するもの
海外で人気がある
ガオンチャートには海外出荷分が含まれるがハントチャートには含まれない。つまりガオンチャートとハントチャートの売上差が大きい=海外で人気があるということを示す。
コアなファンだけではなく一般層にも人気がある
音楽番組のランキングを上げることに関心のないライトなファンの購入先の百貨店・大型ショッピングモセンターはハントチャート非加盟店で売上はガオンチャートには含まれるが、ハントチャートには含まれない。つまりガオンチャートとハントチャートの売上差が大きい=コアなファンだけでなく多数のライトファンがいるということを示す。
在庫が多い
小売店の仕入担当者がファン。
TWICEをはじめ防弾少年団、EXO、SEVENTEEN、GOT7といったトップグループは旧作が複数ランクインしている。これは多少在庫があっても捌けたという証拠。詳しく説明すると、ガオンチャートはCD出荷数-返品数である。在庫がある場合それが捌けるまで小売店は発注しない。発注がなければCD制作会社は出荷しない。出荷がなければガオンチャートにランクインしない。つまりガオンチャートにランクインしているということは返品よりも発注の方が多かった=売れているということ。
また、多数のサイン会をこなしながらランクインしない場合、在庫処理に苦しんでいるということになる。これは小売店の発注ミスでありアーティスト側には無関係なのだが印象が悪くなるのは避けられない。
防弾少年団”WINGS”とEXO”EXACT”の比較
2016年 防弾少年団防弾少年団”WINGS”とEXO”EXACT”のガオンチャート、ハントチャートの売上
グループ名 | ハント | ガオン | 差 |
---|---|---|---|
防弾少年団 “WINGS” | 537,800枚 | 751,301枚 | 213,501枚 |
EXO “EX’ACT | 721,600枚 | 797,277枚 | 75,677枚 |
ハントチャートで防弾少年団”WINGS”とEXO”EX’ACT”の売上を比較するとEXOは防弾少年団を18万枚上回っているが、ガオンチャートでは差が約4万枚まで縮小する。これは上述の通り海外出荷分、ハントチャート非加盟店分で、(在庫は双方が抱えているので無視する)防弾少年団とEXOのガオン・ハント差は防弾少年団213、501枚:EXO75,677枚。この約13万枚の差は防弾少年団とEXOの海外人気、韓国での一般層人気ということになる。
まとめると、防弾少年団とEXOの人気はほぼ同じである。防弾少年団は海外から一般層まで幅広い人気があり、EXOはコアなファンに支えられている。
異論のある人のためにもう少し説明するとEXOの”EX’ACT”は韓国語版と中国語版の2バージョンを同時発売している。これを別アルバム(ガオンもハントも別アルバム扱い)として集計すると
グループ名 | ハント | ガオン | 差 |
---|---|---|---|
防弾少年団 “WINGS” | 537,800枚 | 751,301枚 | 213,501枚 |
EXO “EX’ACT[KOR ver]” | 478,100枚 | 549,378枚 | 71,278枚 |
EXO “EX’ACT[CHN ver]” | 243,500枚 | 247,899枚 | 4,399枚 |
中国語版はアルバムのジャケット数増やしてコアなファンに大量買いさせるための商法で、中国語版を発売しなかったとしても中国語版を買ったファンがその分韓国語版を買い増す可能性は低い。EXOの売上は韓国語版で評価すべきで、そうすると概ね防弾少年団が上回る。少なくとも海外人気、一般人気は防弾少年団の方がEXOを上回っているのは間違いない。
さらに音源チャートの成績を見れば一般層の人気は防弾少年団がEXOを凌駕しているのは一目瞭然。
まとめると、防弾少年団とEXOはコアなファン数はほぼ互角だが、海外人気・一般層の人気の差で防弾少年団はEXOを上回っている。
ついでにガオンチャートとメロンについて説明する。
ガオンチャートよりもメロンが多い理由
ガオンチャートは韓国文化体育観光部傘下の韓国音楽コンテンツ産業協会が運営する公認総合音楽チャートで信頼度が高いはずなのだが、マスコミやブログ等で音源ランキングといえばガオンチャートよりもメロンチャート(MELON)を目にすることが多い。これにはそれなりの理由がある。
情報が遅い
メロンやジニーなどの各音楽配信サイトはランキングの更新が早く、リアルタイムは1時間ごとに、デイリーは遅くても翌日の昼頃、ウィークリーも日曜日のデイリーランキングと当時に更新するのに対し、ガオンチャートは毎週1回木曜日の昼に更新する。
3日も遅い情報であるうえに、当週のランキングの大勢が木曜日の時点でほぼ決まってしまうため、先週のランキング情報は今更感が拭えない。いくら信頼が高いといっても古すぎる情報はマスコミのネタになりにくい。
情報が少ない
音楽配信サイトが順位のみを発表するのに対し、ガオンチャートはストリーミング数、ダウンロード数、CD販売数(月間、年間のみ)の数字を公表するので、情報が少ないというのは語弊があるかもしれないが、ようするにそれだけしかない。
HPまで行くのが面倒くさい
音楽配信サイトは加入者が音楽を聴くためにパソコンやスマホなどで常に接続して、そこで必要な情報は大体手に入るのに対して、ガオンチャートのHPは古いランキング関連の情報しかないのでわざわざ行く必要がない。
それでもガオンが必要な理由
踏んだり蹴ったりのガオンチャートだが、存在理由はある。
ガオンチャート設立の理由
ガオンチャートが出来る前は、各音楽配信サイトがそれぞれランキングを発表していた。問題なのは音楽配信サイトを運営しているのがレコード会社 だということ。(メロンはLOEN、ジニーはKT、MnetはCJE&Mなど)
音楽配信サイトは自社所属歌手だけでなく他社所属の歌手も全部取り扱っているため、自社所属の歌手のランキングに手心を加え、他社所属の歌手はわざとランキングを下げているんじゃないかという疑惑が常にあり、信頼性が低かった。
「各音楽配信サイトが全て自社所属歌手を有利に、他社所属歌手を不利に扱ってるのなら全部足したら公平になるじゃん」という理由でガオンが設立された・・・
かどうかは知しらんけど、ランキングの統一とランキングの公平性信頼性を高める目的でガオンチャートが設立された。
ガオンチャートの長所
具体的な数字が分かる
各音楽配信サイトは順位のみの発表で具体的な数字は発表しませんが、ガオンチャートはストリーミング数、ダウンロード数、CD販売数を発表するので数字マニアな人にはいろいろな比較ができて面白い。
HPが分かりやすい
外国人を意識したのかHPの作りが簡潔で、韓国語が分からなくても多少の英語力と機械翻訳で何とかなる。
ガオンチャートの注意点
ガオンチャートが始まったのが2010年なので、それ以前のデータはない。つまり「ガオン歴代1位」は「2010年以降で1位」という意味であり「韓国音楽史上1位」という意味ではない。
その他、チャート集計の基準の変更、全体の販売量の増減などがあり、単純に昔のデータと比較するのが難しい場合があるので、そのあたりの判断はご自身で。
例えばダウンロード数は2011年1位4,077,885回(T-ara”Roly-Poly”)から2016年1位1,903,126回(GFRIEND”Rough”)と半減したのに対し、ストリーミング数は2011年1位31,682,023回(IU”Good Day”)から2017年111,556,482回(TWICE「CHEER UP)と2倍以上増加した。
CD売上も2011年1位385,348枚(少女時代”The Boys”)から2016年1位751,301枚(防弾少年団”WINGS”)とこちらも2倍近く増加した。
これは韓国内の音楽流通・消費構造の変化によるもので、「防弾少年団は少女時代の2倍人気がある。」、「GFRIENDはT-araの半分の人気しかない」ということを示すものではない。
チャートの種類
- デジタルチャート
ダウンロードチャート+ストリーミングチャート+BGMチャートの合計チャート。かつてはダウンロード50%+ストリーミング50%だったが、いつの間にかBGMチャートが加わっていた。割合は不明。 - ダウンロードチャート
- ストリーミングチャート
ストリーミングというとYoutubeの再生数を思い浮かべがちだが韓国でストリーミングといえば音源サイトの有料ストリーミングを指す。 - BGMチャート
HPなどに使われたBGMチャート モバイルチャート
モバイルの着信音、呼出音チャートガオンアルバムチャート
CDチャートカラオケチャート
ソーシャルチャート
Youtube、Twitter、Weibo、 YinYueTaiでの人気度チャートWeiboチャート
中国Weiboでの人気度チャート
Gaon Chart K-POP Awards
2012年から始まった音楽賞、いわゆる大賞がないのが特徴。アーティストだけでなく、制作会社やスタイリストまで幅広く表彰する。
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